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シニア世代が「お金を守る」ために知っておきたいこと

資産を守る人

ある程度のお金を持っているシニア世代にとって、「資産運用でお金を増やす」といった話は決して他人事ではありません。

それは、一発逆転のチャンスが見込めるという意味ではなくて、むしろその逆。よく分からないまま資産運用をして大損を叩いてしまい、「こんなはずじゃなかった」と後悔するシニア世代が決して珍しい存在ではないからです。

若い世代と比べると資産が潤沢にあるシニア世代にとって、もっとも重要なのは、お金を増やす方法を知ることではなく、「お金を守る方法」。やるべき投資の発掘ではなく、「やってはいけない投資」の回避。運用も大事ですが、それ以上に「管理」の重要性が増してくるのです。

今回は、老後の人生を豊かに生きるために、自分の資産を守るためのポイントを解説します。

シニア世代の資産運用で考えるべきこと

年金生活に突入したシニア世代が資産運用をするにあたって、重視したいポイントは「老後資金の不足に備える」ことです。

すべてを現金化するのはおすすめしない

例えば、損をしたくないからと言って、資産のすべてを現金化するのはおすすめはできません。なぜなら、いつまで生き続けるのかについては、誰にも分からないからです。現代においては、早く死ぬよりも、長く生きてしまう可能性のほうが高いでしょう。

60歳から年金をもらったとしても、80歳まで生きたら20年以上の運用期間があります。すべてを現金化すると、超低金利で生活のために少しずつ削っていくだけ。時間をかけるほど、金利によって資産は増えていく可能性が高いので、せっかく資産を増やすきっかけを失うのはもったいないことです。

現金はインフレで価値が下がる

時代によって物価が変動するように、インフレによって現金の価値は下がります。
例えば、昭和40年の1万円は、令和3年時点では2倍の価値があります。つまり、120年で物価が2倍に膨れ上がっているということです。もしくは、たった60年で現金の価値が0.5倍になっているという考え方もできます。2022年現在も物価がどんどん上がって生活を圧迫しています。

このような事情から、現金でコツコツ貯蓄をして「これで十分だろう」と考えていた当初の予定よりも、物価の高騰によって老後資金が足りなくなってしまう可能性があります。

老後資金の不足に備えるには資産運用が必要

老後は自身で収入を得ることが難しくなります。長生きする場合は、自分の生活費を捻出しなければならず、そのためにも資産運用を完全に辞めるというのはリスクが高いことです。すべてを現金化することは、老後の資金不足に陥るリスクを高める行動だといえるでしょう。

従って、シニア世代であれば、ローリスクかつコストの低い運用に切り替えて利確をしていく必要があります。一方で、生活費を担保していくためにはすべてを換金するのではなく、運用に回すための購買力を維持する必要もあります。

シニア世代ができるだけ避けた方がいい金融商品

資産運用は難しいですが、老後の資金不足に備えるのであれば避けては通れません。ただ、シニア世代は若い世代と比べると貯蓄があります。つまり、どのような金融商品もまとめて購入できるだけの資金力があるということ。ここを狙われて、損をしやすい金融商品を進められることも多いのです。

シニア世代が購入するべき金融商品は?という問いに対しては、おそらく価値観や金銭感覚の違いによって賛否両論があるでしょう。一方で、「シニア世代にとっては致命的な損失に繋がるかもしれない金融商品」であれば、感覚の違いが合ってもそうそうズレるものではありません。

シニア世代が避けるべき金融商品は、以下のような特徴を持つものです。

  • コストが高い商品
  • ハイリターンを売りにしている商品
  • 仕組みが複雑な商品

コストが高い商品

これはシニアに限りませんが、金融商品を選ぶときにはコストの低い商品を選ぶのが鉄則です。

あまり資産運用に関心がない方は、リターンばかりに目が言ってしまうものですが、資産運用においてリターンよりも重視するべきポイントは「コスト」。

例えば、安定した運用をしようと考える時にまず進められるのは「投資信託」でしょう。たしかに、地域と購入時期を分散した長期投資は鉄板の投資方法です。しかし、だからといってすべての投資信託で得ができるかというと、そうでもないのです。

なぜなら、投資信託の中には、割に合わないくらい運用コストの高い商品もあるからです。投資信託の運用コストは、0.1%~2.5%と幅広くあります。
利益が出ているときには気にしない人も多いですが、含み損を持っている場合にも相変わらず運用コストはかかってくるので、0.1%と2%では、積み重ねるとかなり大きな金額です。

例えば、1,000万円を運用するにしても、年間コストが0.5%と1%だった場合、0.5%なら5万円ですが、1%だと10万円にもなります。単純計算で年間5万円の差があり、10年間続ければ50万円、20年続ければ100万円以上もコストに差がつきます。運用コストがもっと安ければプラスになるかもしれない、という状況も出てくるでしょう。

最低でも1%を切るような運用コストになる商品を選ぶことが重要です。

ハイリターンを売りにしている商品

「一発逆転で大金を手にする」というのは誰もが一度は夢見ること。宝くじ事業から収められている収益金が公共事業を推進するほど莫大な金額であることからも、この壮大な夢をすっぱり諦められる人が少ない、もしくは夢を諦めきれない人が大金を注ぎ込んでしまうことを示唆しています。

安定的な運用をする場合は、債権を選ぶのがスタンダードです。しかし、債権の金利は低すぎます。特に円建てでは、雀の涙ほどのリターンです。

では、日本円以外の通貨だったらいいのでは?と考え、そこに希望を感じるのも致し方ないことでしょう。
シニア世代には「外国債券投資」や「新興国通貨建債券」を勧める人もいます。海外の債権を買うことで、為替による差額が出るので、やりようによってはかなり高い利回りが期待できます。

しかし、この2つはかなり大損を出してしまう方が多い金融商品でもあります。
もちろん、これら商品が詐欺を働いているというわけではなく、専門知識と世界情勢が綿密に関わってくるため、(「債権」であることには違いないのですが)安定的なリターンを出すのが困難なのです。もし「債権=安定している」という認識なのであれば、それは条件次第で変わってくることを念頭においておきましょう。

為替リスクがある以上、中・長期保有によって損益分岐点を低くする運用方法が前提となります。いくら利回りが高い債券とはいっても、短期間ではメリットを得られません。綿密に運用計画を立てておいたほうがいい商品でもあり、投資に慣れていない人が手を出すにはややハードルの高い金融商品です。

「外国債券投資」については、数年しか保有しない短期投資のために為替ヘッジ(リスクの軽減)を組み合わせた外国債券もあります。ただし、為替の短期的な動きを予測するというのは、専門家にさえ難しいことです。しかもヘッジにかかるコストも含まれるので、運用コストを加味してリターンを出すように計画しなければいけません。
「新興国通貨建債券」のデメリットは、手数料が非常に高いという点です。

どちらも上記で紹介した「コストが高い商品」に該当するため、このデメリットを飲み込んでもリターンが出るかどうかを吟味することは必須です。

為替を利用した投資が悪いというわけではありませんが、結果的にローリターンもしくは含み損になる可能性もあるので、初心者にはおすすめできません。

仕組みが複雑な商品

複雑な仕組みを採用した金融商品は、なんだかすごいことをしてくれそうな気がしますが、残念ながらそうなるとは限りません。

複雑な仕組みを内用する金融商品として、その名の通り 「仕組債」があります。これは、要するに特別な「仕組み」をもつ債券ということ。特に、デリバティブ(金融派生商品)という仕組みが債券に組みこまれているケースが多くなっています。

仕組債で懸念スべきなのは、手数料がブラックボックス化してしまっていることです。これでは、運用コストがどれくらいかかっているのか投資家側で把握することが難しく、コストが分からなければ運用計画も不完全なものになってしまいます。

また、仕組債に関していえば、現金化がしにくいというのもデメリットでしょう。換金したいと思っても、中途売却が難しいのです。仮に換金できたとしても、損をする可能性が高くなります。シニア世代であれば、病気などのリスクも高く、いつお金が必要になるか分かりません。万が一に備えてすぐに現金化できるような商品が望ましいでしょう。

また、仕組債は、複雑かつリスクが大きすぎるという点で顧客ニーズに即していないと金融庁からの指摘を受け、銀行や証券会社が販売を見直しつつある金融商品でもあります。こういう事情もあるので、仕組みが複雑かつ流動性が低く換金が難しい「仕組債」にはあまり手を出さないほうがいいかもしれません。

資産を守るためにどうするべきか?

では、具体的にどうやって資産運用をしていけばいいのでしょうか。確実な方法はありませんが、資産運用をするうえで抑えておきたいポイントは2つです。

まず、「必要額を定期的に現金化する」こと。一気に全額を換金してしまうと、インフレや想定外の長生きといった事情によって、老後資産が足りなくなってしまう可能性があります。

資産運用をする際には、「コストが安い商品」「仕組みが理解できる商品」に絞って、なんとなくで購入することはやめましょう。比較的安定していると言われる債券であっても同様です。

金融機関から投資を進められることもあるかと思いますが、そのときも1つの金融機関だけを信頼するのではなく、複数の金融機関が持つ商品と比較・検討することで、客観的な視点を持てるでしょう。

まずは「やってはいけないこと」を知ろう

投資は元本保証はされないので、多少の損失が出るのは仕方ないことですが、考えなしに投資を始めると大損をしてしまうことも珍しくありません。

シニア世代にとって投資は検討してもよい資産防衛方法の一つですが、まずは「投資でやってはいけないこと」を理解しておきましょう。

そうすることで、どんなに夢のある金融商品を出されても、大きな失敗を避けることができます。資産運用をするために金融商品に手を出す場合は、その仕組みやメリット・デメリットを十分に理解したうえで購入することが大切です。

ゆたらい通信.com